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東芝、日立が撤退、原子力発電はどうなるのかtohi

 日立製作所が英国の子会社ホライゾン・ニュークリア・パワー経由取り組んでいたウィルヴァ・ニューウィッド原発(1、2号機合計276万kW)の開発を一旦停止すると発表したのは、2019年1月だった。当時ホライゾンのCEOは、「事業継続により一日あたり100万ポンド(1億3,500万円)の資金流出が続くので、英国政府との資金に関する合意得られるまで凍結する」と述べていた。



今年8月には、ホライゾンは近々開発業務を再開する見込みと英国で報じられたが、予想に反し9月中旬日立は英国の原発事業からの撤退を発表した。ウィルヴァ事業に加え、計画されていたオールドベリー原発(合計276万kW)からも撤退するので、合わせて英国の電力需要の10数%を担う予定であった事業が宙に浮くことになった。


現在英国で稼働している原発15基(合計約900万kW)は、2025年までに約半数が、2030年には大半が閉鎖される予定だ。温暖化問題に極めて関心が高い世論もあり英国政府は原発の新設に力を入れている。しかし、2018年11月の東芝のムーアサイド原発計画からの撤退に日立が続いたことに加え、今後進む中国資本による建設についても国内で懸念する声も高まっている。英国の原発建設はどうなるのだろうか。



東芝、日立が英国の原発事業から撤退したように、民間企業による海外での原発建設は難しくなっている。その最大の理由は、工費増大と工期遅れのリスク負担が事業者には難しくなっていることだ。一方、ロシア、中国、韓国企業が建設している原発では工費、工期の問題はほとんどないようだ。露中韓企業の事業と欧米の事業では何が異なるのだろうか。その答えは工事経験の継続にありそうだ。


日本国内での新設が中断し、海外事業からも撤退が相次ぐ日本企業は、建設の経験と技術を徐々に失う懸念がある。これから世界の原発建設はどう進むのだろうか、日本企業は一端を担うことができるのだろうか。



温暖化問題に関心が高い英国民


昨年3月英国ビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)が行った調査では、英国民の35%が温暖化問題に非常に懸念をもっている。かなり懸念していると答えた人を加えると80%が懸念を抱いている。温暖化は人為的活動により引き起こされているとしている人は48%、人為的活動と自然の変化によるものとする人が40%。家庭で節電を行っている人は56%、車の使用を控えている人は51%もいる。


世論もあり英国政府は多くの分野で低炭素化を進めている。内燃機関自動車の販売は2040年に終了し、輸送部門を電気あるいは水素に切り替える予定だ。古い建物が多いビル・住宅の改装、省エネ化も進めるが、2019年英国の二酸化炭素(CO2)排出量の3億5150万トン(速報値)の内5740万トン(16.3%)を占める電力部門のCO2削減が重要になる。


英国は発電の大半を国産エネルギーの石炭で賄っていたが、採炭条件の悪化が著しくなった1980年代に石炭産業を民営化し高コストの坑内掘り炭鉱と石炭火力発電所の閉鎖を進めた。結果、電力部門のCO2排出量は、1990年の2億300万トンから大きく減少したが、英国が目標とする2050年純排出量ゼロのためには、さらに電力部門の低炭素化を進める必要がある。そのカギは原子力発電所の新設だ。BEIS調査では原子力発電支持の比率は35%、反対は23%、どちらでもないが38%だ。原子力発電に関する英国民の意見は通りだが、原子力は信頼できると考える人が48%、そうでないという人は13%であり、原子力発電に対する英国民の支持は強い。



原発は気候変動に役立つと考える人が33%に対し、そうでないが19%もいる。CO2を排出しない原発を気候変動に役立たないと考える人が結構多いのだが、今年英国機械エンジニア協会が行った調査では、原発を低炭素電源と理解していた人の比率は48%、男性60%に対し女性38%、18歳から24歳では26%しか理解しておらず、年齢が上昇するに従って理解度も上昇している。


原子力発電所の新設を進める英国政府


英国は輸入を含めた電力供給の内約15%を原子力発電に依存している国だが、最も新しい設備でも運転開始は1989年、30年以上前だ。温暖化対策も考えると新設が急がれることとなり、英国政府は計画を進めている。その第一号が現在工事が進められているヒンクリーポイントC発電所だ。設備能力は、1,2号機合わせ344万kW、英国の電力需要の7%、8%を賄うことになる大型プロジェクトだ。1号機は25年、2号機は26年運転開始予定になっている。



この建設に際し開発主体EDF(フランス電力)と英国政府間では発電された電力を35年間にわたり1000kW時当たり92.5ポンド(12.5円/kW時)にて買い取るCfD(差額保証契約)と呼ばれる契約が締結されている。当初の建設予定費180億ポンド(昨年9月の見直しで215億から225億ポンド‐約3兆円に修正されている)に対し810億ポンド(10.9兆円)が支払われることになり、高収益を保証しているとの批判もあったが、開発主体も大きなリスクを取っている。


英国政府との契約の詳細は開示されていないが、リスクとして考えられるのは工費の増大と工期の遅れだ。完成予定から4年経てば、自動的に35年契約が開始されることになり、工期が4年以上遅れれば支払期間が徐々に短くなる。加えて工期が8年遅れればCfDの保証がなくなる条項があると言われている。EDFが手掛けるヒンクリーポイントCと同型のEPR(欧州加圧水型炉)の建設は、中国では既に2基が予定通り完成し稼働しているものの、フィンランド、フランスの建設工事は予定より大幅に工期が伸びている。



中国広核集団(CGN)が2015年ヒンクリーポイントC の33.5%の権益を取得すると発表したが、政治体制が異なる国が基幹エネルギーの権益を取得することが問題となり、英国政府の承認にはほぼ1年を要した。同時に中国企業が、今後英国にて新規原発の建設を主体的に進めることも認められたが、英中間に隙間風が吹き始めたため先行きは不透明になってきた。


日立の撤退と英国電力供給の今後


ウィルヴァ原発に関する日立への英国政府提案は次の内容だったと報道されている。


(1)英国政府が3分の1の権益を取得する


(2)英国政府が建設資金を融資する


(3) CfDの価格として1000kW時当たり75ポンド(10.1円/kW時)を保証する



英国政府は、ヒースロー空港拡張、水道事業のインフラ投資に利用した規制資産ベース(RAB)モデルも検討したが、日立への提案はなかったとされる。RABモデルでは建設中の費用も利用者から徴収することになるので、投資額が上振れした際には電気料金上昇を招く点が問題だったのだろう。


上述の英国政府提案でも日立は建設に踏み切れなかったことから、英国政府が建設を行い事業者への設備譲渡も検討すべき段階にきているとの報道もあった。ヒンクリーポイントCの建設を行っているEDF、CGNともに国営企業であることから、これからは国がバックについていなければリスクを取ることは難しいとの声もでている。今後の英国の原発計画には全て中国CGNが関与しているが、中国企業を関与させるべきではないとの声も強くなってきた。


香港国家安全維持法、新型コロナの初期段階での情報隠し報道、ウイグル問題などで中国に対するイメージが悪化していることに加え、中国の関与により知的財産・原子力技術流出、企業に悪影響を及ぼす懸念があるので、中国企業の参加については見直すべきと保守派政治家などから指摘された。英国政府は5G通信網からファーウェイ排除を決めたのに続き、CGN主導のブラッドウエルB原発建設についても見直す計画と報道されている。逆に、中国が英国の原子力発電事業への投資を取りやめるとの報道もあり、今後の英国の原発建設には不透明感が漂い、英国政府は悩みを深めそうだ。


これからどうなる世界と日本の原発、経験と新技術


最近完工した世界の原発のリストは通りだ。欧州では原発の工費、工期の増大が言われているが、リストに記載されている工事に大きな遅れはなかった。リストの事業を手掛けているのは、ロシア、中国、韓国企業だ。欧州の原発建設工事で工期の遅れを出しているEDFと何が異なるのだろうか。


EDFが手掛けているフィンランド・オルキルオト3号機の工事が当初遅れた時には、EPRが新型炉であるためと言われていたが、中国で建設されたEPRは遅れもなく完成した。EDFがロシア企業などと一番異なる点は、工事を継続して行っているかどうかだろう。中国もロシアも韓国も自国を含め原発の建設が続いている。原発新設が長く停滞した欧米諸国とは、工事の経験が異なっている。


日本でもかつては建設が続いていたが、福島第一原発の事故により新設が止まってしまった。再稼働にも時間が掛かっており、現場の知見も失われつつあるだろう。建設中断の期間が長くなると工事経験を失うことになる。原発抜きで温暖化対策を進めることは難しいと国際エネルギー機関は見ている。温暖化対策上今後も新設が必要な中で日本も現場を含め技術の維持が必要だ。


米国を初め世界の多くの国では、いま小型炉(SMR)の検討が進んでいる。工費が安く、工期が短く、例えば電源喪失時に自然対流で冷却が可能になるなど安全性に優れているからだ。米原子力規制委員会の審査が最も進んでいるのはニュースケールパワーのSMRだが、既に幾つかの国が自国での建設に関心を表明している。ビル・ゲイツが出資し会長を務めるテラパワー社の新型炉も2020年代には実用化を目指しているが、GE日立との共同開発がなされるとの報道が最近あった。これから世界の原発はSMRが中心になる可能性が高いが、日本企業が持つ技術を活かし貢献できる分野の一つだ。

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アルメニアとアゼルの戦闘激化、両国は和平協議を拒否ar

 旧ソ連のアゼルバイジャンとアルメニアの間で勃発したナゴルノカラバフ地域を巡る戦闘は29日も激化の一途をたどり、双方が互いの領土内に砲撃を加える事態となった。民族紛争が全面戦争に発展する恐れが高まる中、米ロなどが自制を呼び掛けている。



ただ、両国は和平協議を拒否。アゼルバイジャンのアリエフ大統領はロシアの国営テレビに対し、協議の可能性を一蹴。アルメニアのパシニャン首相も同テレビに対し、戦闘が続く間は協議できないと述べた。


輸出用の石油や天然ガスの輸送パイプラインが通る南カフカス地域の安定が損なわれれば、資源価格に影響が出るとの懸念も高まっている。



国連の安全保障理事会は29日に開いた非公式会合で、激化する戦闘に強い懸念を表明し、武力行使を非難。国連のグテレス事務総長による紛争の即時停止要請を支持する考えを示した。


この日はアルメニアが、自国軍機がトルコのF16戦闘機によりアルメニア領空内で撃墜されたと発表。緊張が一段と高まった。



アルメニアはパイロットが死亡したとしているが、撃墜の証拠は示していない。トルコはアルメニアの主張は「完全に正しくない」として撃墜を否定。アゼルバイジャンも関与を否定している。


ナゴルノカラバフ地域を巡る対立が一段と先鋭化すれば、トルコだけでなく、ロシアも巻き込んだ地域紛争に発展する恐れがある。



ロシアはアルメニアと軍事協定を結んでいるが、同時にアゼルバイジャンとも近い関係を維持。ロシア大統領府によると、プーチン大統領はアルメニアのパシニャン首相と紛争激化後2回目となる電話会談を実施。関与する全ての国・地域に対し事態の沈静化を呼び掛けた。ロシア大統領府は、プーチン氏がアゼルバイジャンのアリエフ大統領と接触したかについては公式に明らかにしていない。


アゼルバイジャン当局によると、戦闘でこれまでに民間人12人が死亡、35人が負傷した。兵士の死亡者数、負傷者数については明らかにしていない。ナゴルノカラバフ当局によると、少なくとも兵士84人が死亡した。



アルメニア当局によると、紛争地のナゴルノカラバフから約20キロ離れたバルデニスで、アゼルバイジャンによる攻撃で民間人1人が死亡した。アゼルバイジャン防衛省は、アルメニア軍がバルデニスからアゼルバイジャンのダシュケサン地域に攻撃を加えていた主張。アルメニアはこれを否定している。


米大統領選挙の民主党候補、バイデン前副大統領は「ナゴルノカラバフを巡る紛争で死者数が急増する中、トランプ政権はアゼルバイジャンとアルメニアに対し事態の沈静化を呼び掛ける必要がある同時に、トルコなどに干渉しないよう要請する必要がある」とツイッターに投稿した。



この問題のキモは「トルコの介入をどう抑えるか」でしょう。近年、シリアやリビアの内戦、イラクのクルド人勢力への攻撃など、トルコは中東の紛争への介入を活発に行っています(無論、トルコだけが悪いのではなく、中東の場合、ロシアやイラン、米国やサウジなどによる介入も事態を深刻です)。今回は中東でなく旧ソ連圏ですが、アゼルバイジャンは国民の大多数がイスラム教徒でトルコと関係が深く、逆にアルメニアはキリスト教徒が多く19世紀末から20世紀初頭にかけ、トルコから苛烈な迫害を受けた歴史的な因縁があります。


多くの場合、紛争当事国だけでなく、様々な思惑を持って介入する国々によって、戦争や内戦は長引き犠牲者が増大します。トルコは親日国ですので、日本としてもトルコに対し、武力行使や戦争激化に加担するのではなく、和平のために動くよう、働きかけることが重要でしょう。

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日本「渡航中止勧告を緩和」、「ただし韓国は除外」ja

 日本政府は来月からオーストラリアとニュージーランド、ベトナムなど新型コロナウイルス感染症の新規感染者が少ない10か国あまりへの出国を、段階的に許可することにした。しかし1次対象国から韓国は除外されることが伝えられた。



28日 日本経済新聞によると、今年の10月からレベル3の「渡航中止」勧告令が下されていた国家・地域のうち、ここ2週間で人口あたりの新規感染者が少ない所には「感染症危険情報」のレベルを2段階の「不必要な非常渡航中止」に下げる予定である。


まだ具体的な国家・地域は確定されていないが、オーストラリア・ニュージーランド・ベトナム・ブルネイなど、一日の感染者数が「0」に近い国家・地域から出国を許可するものとみられると、日本経済新聞は伝えた。



新型コロナ事態が本格化して以降、日本がこのように危険情報を下げるのは今回が初めてである。


この日の基準でレベル3が発令されている国家は、韓国を含めて米国と中国など159の国家・地域である。


ただ 日本が出国制限を解除したとしても、相手国が認めなければ出国はできない。また レベル2から3の国家・地域から日本に帰国する場合、原則的に2週間の隔離が必要である。



日本政府はこれとは別に中国・台湾・ベトナムなど16の国家・地域と、ビジネスに限定した出入国の再開交渉を進めている。事業交流を増やし経済を速やかに正常化させるためである。


また10月1日から3か月以上日本に滞在できる資格をもった外国人に対して、新規入国を認める方針である。留学生など中長期滞在者を対象にしたこの措置には韓国が含まれている。



政経分離なんて韓国が言ってるだけの戯言でしかない。感染者が多いところは勿論だめだが経済戦争下では安全保障分野で連携を取りたいところを優先するのが当たり前。つまりお前らは敵国って言われてんだわ。

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ドイツ企業が中国に天文学的な新規投資を実施して次世代産業を育成す

 独フォルクスワーゲン(VW)は28日、合弁3社と共同で中国の電気自動車(EV)などの分野で2024年までの5年間に計150億ユーロ(約1兆8千億円)を投資すると発表した。25年までに中国で新エネルギー車を15車種投入し、製品の35%を電動車にするという。世界最大のEV市場である中国で攻勢を強める。



VWの中国法人のほか、上海汽車集団、中国第一汽車集団、安徽江淮汽車集団(JAC)との合弁3社が共同で投資する。20年の中国でのEVなどへの投資額は約16億ユーロとなる見込みで、21年以降に一段と増やす。VWは世界で20~24年にEVなどへ330億ユーロを投じる計画を公表済みだが、中国で合弁会社を含めた投資額は入れていなかった。今回初めて中長期の計画を示した。


足元では10月から、自社開発したEV専用の車台「MEB」を使うEVの生産を中国の2工場で開始。同月に中国で発売する多目的スポーツ車(SUV)のEV「ID.4」など、年間60万台を生産するという。20年の中国での新エネ車の販売台数は19年比2倍に伸びる見通しといい、積極投資で上積みを図る。



VWの中国での乗用車販売は19年に400万台を超え、中国市場で約2割のシェアを握る最大手だ。VWにとっても中国は販売台数の約4割を占める最大市場に当たり、現地企業への出資を広げている。5月にはJACの親会社に10億ユーロを投じて50%出資することを決めたほか、中国車載電池大手の国軒高科にも総額10億ユーロを出資して26%の株を取得すると発表した。



ガソリンエンジンに頼る日本とは違いクリーンディーゼルや燃料電池で常に最先端を行くドイツは素晴らしいって、パヨチンXのザ・総括ってネタ記事で褒めまくってたが、どっちも日本に追い抜かれたから慌てて支那媚びかあ。


ぱよゆきが「電気自動車は誰でも参入できる」なる寝言吐き始めたのもこの動きがあってこそか。

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ラオス、中国の「債務のわな」懸念!ラオス側は経営権を中国に譲ったlao

 東南アジアの内陸国ラオスが対外債務の返済に苦しんでいる。中国主導による巨大経済圏構想「一帯一路」に参加し、巨額の融資を受けてダムや鉄道などのインフラ整備を進めたが、主に中国に対する債務返済で負担が重くのしかかってきた。途上国が返済の代わりに、完成後のインフラ施設を中国に明け渡す「債務のわな」に、ラオスも陥る懸念が指摘されている。



「厳しい対外債務の状況に直面している」。格付け機関大手のフィッチ・レーティングスは23日、ラオスの長期債務の格付けを「Bマイナス」から「トリプルC」に2段階引き下げた。


ラオスの外貨準備高が約13億ドル(約1370億円)なのに対し、年内に約5億ドル、来年からの4年間に毎年、約11億ドルの債務返済義務があることが理由だ。ラオスの対外債務は累積100億ドル以上とされ、国際通貨基金(IMF)によると、このうち約4割は中国からの融資だという。



中国南部と国境を接するラオスも一党支配による社会主義体制で、中国から支援を受けている。ダム建設などのほか、中国側と首都ビエンチャンを結ぶ鉄道も、来年12月の開業を目指して建設が進む。


だが、今年に入って新型コロナウイルス流行で観光業が打撃を受けたことなどから、ラオスの歳入が急減。通貨安も追い打ちをかけ、財政事情が逼迫(ひっぱく)してきた。英紙フィナンシャル・タイムズは、ラオスが債務減免について「中国と協議した」と報じたが、中国側の対応はなお不透明だ。



チャイナマネーに頼ったインフラ整備は世界的に懸念の声が強く、米シンクタンクは、ラオスをパキスタンなどと並ぶ「一帯一路の債務負担に対して脆弱(ぜいじゃく)な8カ国」の一つに挙げた。


ただ、中国によるラオス浸透策は加速している。ラオス国営電力会社と中国電力大手は1日、送電事業などで新会社を設立した。



負担を軽減したいラオス側は経営権を中国に譲ったとされ、ロイター通信は「こうした協定がラオスを巨大な隣国(中国)にこれまで以上に近づける」と警告した。


一帯一路は中国の対外覇権の手段となっている。そのメカニズムはこうだ。


中国はまず新興国や発展途上国に対し、多額の投融資をする。そして、相手国が中国への債務返済に行き詰まり、中国はインフラの使用権や運営権の移譲を要求する。つまり、相手国を借金漬けにして影響力拡大を図ろうとしている。



ラオスも、その中国の一帯一路において、中国から過剰な融資を受け、「債務のわな」に陥る懸念が指摘されている。


スリランカも2017年、中国への債務返済に行き詰まり、南部の港の運営権を99年間、中国企業に譲渡した。


アメリカの調査研究機関のグローバル開発センターは2018年、ラオスやジブチ、モンゴル、パキスタンなど8ヵ国が一帯一路に伴う「深刻な債務リスク」に直面し、カンボジアやスリランカなど15か国が「高い債務リスク」を負っていると指摘していた。



昨年、ある中国の起業家を取材しましたが、ラオスはすさまじい電力余りが起きているとのこと。中国の融資で水力発電所を作ったのはいいものの、工業企業の誘致がうまくいかず電力の使い先がなかなかないのだとか。その安い電力を使ってある事業を考えている……という話でした。


どーんとお金が動いてインフラを作ったはいいが、どう使うかという計画がついていかないのは中国あるあるです。中国にはそこでちょうじりをつけるための知恵だったり、過剰資産を安く使おうとするアニマルスピリッツにあふれる企業家がいるわけですが、中国外ではなかなか同じことはできないですね。

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北朝鮮が「共同調査」を受け入れ難い3つの理由…韓国の軍通信線再稼働要求に応じず

 韓国人公務員が北朝鮮軍に銃殺された事件に対する真相究明のため、韓国政府が北朝鮮に南北共同調査を要請した。ただ、北朝鮮が韓国側の共同調査に応じる可能性は低いものとみられる。



北朝鮮は慣例的に関連事件のすべての具体的な真相公開は避けている。2008年に起こった金剛山観光客の銃撃事件の際も、北朝鮮は韓国の共同調査を拒否している。追加の調査で発生しうる「対面の損傷」を憂慮するものと推測される。


今回の事件もまた北朝鮮の過失が追加で現れる可能性があるだけに、共同調査に積極的に臨む可能性は低い。特に、北朝鮮のキム・ジョンウン(金正恩)国務委員長の「謝罪」があった事案であるだけに、北朝鮮の立場からは事が大きくならないように管理することが重要だ。



今月25日に北朝鮮は今回の事件と関連し、異例的な謝罪と共に再発防止を約束する柔和なメッセージを発表した。ただ、翌日に韓国政府から共同調査に関する話が出ると、すぐに警戒姿勢を示した。


北朝鮮は公営の朝鮮中央通信を通じ、「われわれは西南海上と西部海岸の全地域で捜索を組織し潮流に乗り、遺体を拾得した場合、慣例通りに韓国側に引き渡す手続きと方法までも考えている」と自体的な捜索を行うことを公表した。



続いて、「韓国側が自己の領海でどんな捜索を行っても構わない。ただ、われわれの領海を侵すことは絶対に見過ごすことはできず、これに対し厳重に警告する」と韓国政府が共同調査を正式に要請する前に、先立って線を引く姿を示しもした。


北朝鮮が共同調査を避けることには、新型コロナウイルスの伝播に対する恐怖心もある。南北の人員が大々的に接触するのは現実的に不可能だという理由だ。



北朝鮮が共同調査に多少応じる反応を見せたことで、韓国政府は非対面の議論を通じた共同調査を要請した。軍事通信線の復旧と再稼働を通じ、南北がそれぞれの海域で捜索に全力を尽くし必要な情報を交換して協力しようというものだ。


北朝鮮の立場からは対外行歩に出る余力がないという点も韓国側の共同調査提案が負担になる理由だ。最近は北朝鮮内部で党創建75周年記念日(10月10日)と第8次党大会の準備が盛んに行われている。



内部用メディアである労働党機関紙「労働新聞」と朝鮮中央テレビでは今回の事件が一切言及されていない点も、こうした状況のためとみられる。北朝鮮は外部用メディアの朝鮮中央通信と宣伝メディアを通じてのみ今回の事件の内容を扱っている。


北朝鮮が28日午前現在、韓国との軍通信線を正常の状態に転換していないことが分かった。韓国の政府消息筋が明らかにした。


同消息筋は「北が軍通信線をオフにしている」として、「この状態が転換されなければ通話ができない」と述べた。



韓国は文在寅(ムン・ジェイン)大統領が27日に開いた緊急の安全保障関係閣僚会議で、北朝鮮に軍通信線の復旧と再稼働を要請することを決めた。


南北の軍事当局は東側と西側の軍通信線を利用し、毎日午前9時と午後4時の2回、定期的な通話を行ってきたが、北朝鮮は韓国の脱北者団体による北朝鮮非難ビラの散布を問題視し、6月9日から応じていない。


一方、北朝鮮による「韓国国家公務員射殺事件」が起きた直後に韓国の24時間専門ニュースチャンネル「YTN」が大手世論調査会社「リアルメータ」に委託して行った世論調査(9月21-25日)によると、文在寅大統領の支持率は前週(9月第3週)の46.4%よりもさらに1.7%下落し、44.7%。依然として50%以下である。一方、「支持しない」は1.4%アップの51.5%で、前週よりもその差がさらに開いた。



ちなみに5月の第1週には積極的な新型コロナウイルス感染症対策が評価され、支持率は71%まで跳ね上がっていた。また、6月の第1週でも59.1%もあった。


7月の第1週に49.8%と、50%台を割ってから「支持」が「不支持」を下回る傾向が続いていた文大統領の支持率は8月の第4週で一旦は「支持」49%対「不支持」46.7%と、「支持」が上回ったものの翌週(9月の第1週)で同率になったのを最後に9月の第2週からは再び「不支持」が「支持」を逆転していた。


政権与党の「共に民主党」(174議席)の支持率は34.1%。前週よりも1.1%下げたが、野党第一党の「国民の力」(103議席)も同様に支持率を落とし、0.4%マイナスの28.9%と、依然として与党との差を詰めることができない。



「国民の力」は与党の地盤である全羅道で4.3%、中道層の多い忠清道で4.8%支持率を上昇させたが、意外にも保守の牙城である大邱・慶尚北道では逆に5.5%下げていた。


世代別では「共に民主党」は30代で4.1%支持率を伸ばしたが、20代では逆に4.9%も落している。一方、「国民の力」は70代以上では4.2%アップさせたものの、20代では与党よりも悪く、6.2%も下落している。


その他の政党では与党の弟分である「開かれた民主党」(3議席)が6.2%、保守系の「国民の党」(3議席)が5.8%、進歩系の「正義党」(6議席)が5.3%となっている。



なお、もう一つの大手世論調査会社「韓国ギャラップ」が9月22日から24日にかけて行った世論調査では文大統領の支持率は前週よりも1%ダウンの44%で、「不支持」は逆に3%アップの48%だった。


「不支持」の理由として「全般的に物足りない」(14%)、「経済・民生問題の解決不足」(10%)、「不動産政策」(10%)、「人事問題」(10%)が順に挙げられていた。


政党支持率は「共に民主党」が37%、「国民の力」が21%と、「リアルメータ」の調査よりもその差は大きく開いていた。


その他の政党では「正義党」が5%、「国民の党」が4%、「開かれた民主党」が3%となっていた。

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韓国勢に奪われたシェア奪還のため日台企業が競争態勢の準備を開始sharp

 シャープは10月1日に主力の液晶パネルを手掛けるディスプレー事業を分社化し、「シャープディスプレイテクノロジー」(SDTC)として発足させる。他社との協業や株式市場への上場も視野に、外部資金を調達しやすい態勢を整備。液晶、有機ELの先を見据えた「次世代ディスプレー」の開発を進め、韓国勢に後れをとるディスプレー市場でのシェア奪還を狙う。



超高精細な120型8K液晶テレビ、8K技術を活用した文化財鑑賞や病理診断のサービス…。シャープの屋台骨であるこれらの技術を培ってきたディスプレー事業の売上高は全体の3割を占める。


新会社SDTCはシャープの完全子会社となり同事業を継承する。数千億円が必要な次世代ディスプレーの開発資金を外部から得やすくする。



本社を亀山事業所(三重県亀山市)に置き、シャープの同事業トップである桶谷(おけたに)大亥(たいみ)氏が会長、親会社の台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業出身の王建二常務が社長に就く。


開発の核となる技術は試作段階の「マイクロ発光ダイオード(LED)」だ。


マイクロ(100万分の1)メートル単位まで小さくした赤、青、緑のLEDをパネルに敷き詰め映像を表示する。特徴は明るさ、明暗の強さなど。テレビやスマートフォン、メガネ型のウェアラブル端末などへの活用が期待できる。



ほかのディスプレーのうち、液晶は背面からバックライトで照らしシャッターを使って光量を調節するため電力の効率が悪い。完全にはバックライトの光を遮れず明暗も強くならない。マイクロLEDは自ら光るためこうした欠点がない。


また、有機ELは自ら光るが有機物質を使っているため耐久性で劣り、寿命が長くない。品質の安定した無機物質を使うマイクロLEDは耐久性が優れている。


かつてシャープは液晶技術で世界の薄型テレビ市場の大きなシェアを占めていた。ここ数年の高価格帯機種では有機ELが主流で、韓国のサムスン電子やLGエレクトロニクスの後塵(こうじん)を拝している。



マイクロLEDで巻き返しを狙うが、課題は性能の優秀さのアピールに成功し、メーカーによる採用につなげられるかだ。


開発コストが高く、量産態勢を作り低価格化できるかも課題となる。ライバルのソニーやサムスンが発売している製品も高額な商業用だ。シャープは量産に向け、8月に購入を決めたジャパンディスプレイ(JDI)の白山工場(石川県)の活用も検討する。


台湾企業なシャープは、既に買収されて回ってるんだろうに、分社化して他から投資を受け入れるってどう見ても中国に売り飛ばされるフラグに見える。



中国に売るのを避けるために、台湾に買収されたんだろうにねえ。

あとは、前から言われてたけど、鴻海はバラして売りさばいて撤収するのかもね。


他の日本企業は技術も金も出してはくれないだろうし、どうなるかね。

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インドネシアで密造酒を飲んで日本人死亡か…indo

 密造酒で中毒症状 死者も



インドネシアで複数の在留日本人が、密造酒が原因と見られる中毒症状を発症し、死者が出ていることが分かり、現地大使館が注意を呼びかけている。


在インドネシア日本大使館は9月26日、首都ジャカルタ圏内で最近、密造酒(非正規の自家製アルコール飲料)を飲んだ複数の在住日本人が深刻な中毒症状を起こし、死者が出たと発表した。大使館がホームページ上に公開した当該密造酒はプラスチックのボトルに入っていた。



インドネシアでは長年にわたって密造酒が大きな社会問題となっている。2018年には密造酒を飲んだ60人以上が死亡するなど、死亡事故が毎年のように相次いでいるのだ。過去に押収された密造酒からはメタノール成分や高カフェインの栄養ドリンク、虫よけ剤など検出された。


安価な密造酒に手を出す人々も


なぜ密造酒が国内で広く出回っているのか。インドネシアは国民の大多数がイスラム教徒で、戒律ではアルコールの摂取が禁じられているが、酒の販売は国の法律では認められている。一方でアルコール類の税率は高く設定されていて、低所得者層の人々は安価な密造酒に手を出すことが多い。厳しい規制が、結果的に密造酒が出回る原因ともなっている。



在インドネシア日本大使館は、この“殺人密造酒”が他の在留日本人にも出回っている可能性があると指摘し、「インドネシアにおいては、密造酒や闇酒が広く出回っている状況がありますので、いかなる場合であっても、非正規のアルコール飲料の購入及び摂取は絶対にお止めください」と注意を呼びかけている。



日本人が密造酒で死亡、ってのが驚き。


好奇心で一口くらい飲むことはあってもおかしくないが、本気飲みしていたのか?


インドネシアでは酒は合法で簡単に買えるし、ビンタンビールは旨い。


駐在員じゃないのかな。

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日本企業の中国撤退の補助金申請が2兆円近い額に到達!このビッグウェーブにdechina

 今年7月末現在、中国からの移転を決めた日系企業が約1700社に達していたことが明らかになった。米国政府系報道機関「ラジオ・フリー・アジア(RFA)」が報じた。



新型コロナウイルスの大流行によって、中国内の日本企業などでの生産が滞り、日本に物品が届かなくなる“サプライチェーン(流通網)の寸断”が発生。これを受けて、日本政府は今年4月、中国進出日系企業のなかで、中国からの移転を決めた企業に補助金を出すことを決め、移転補助金の申請を受け付けていた。


申請は2期に分けて行われており、6月末までの第1期期間中に移転補助金を申請した企業は87社で、政府は総額574億円を承認している。


第2期分の締め切りは7月末で、合計1670社から申請が出され、総額では165億7000万ドル(約1兆8000億円)に達した。日本政府は当初、約2400億円の予算を計上していたが、今後、予算を増額するとみられる。



中国メディアは日本政府のサプライチェーン強化策について、「日本企業が中国から離れるのは短期的には現実的ではない」と伝えていた。しかし、一方で山東大学金融学部の司令本教授は、「新型コロナウイルスの流行で、日本企業は中国にサプライチェーンを集中するのはデメリットが多いと同時に、中国における人件費の上昇や貿易障壁など多くの不確実性があることに改めて気が付き、その結果、中国離れが加速していったのではないか」と指摘している。


帝国データバンクによると、中国に進出している日本企業は約1万3600社だが、今回の中国からの移転を決めた企業は1757社で、中国進出企業全体の約13%となる。



また、日本貿易振興機構(JETRO)が2019年に実施した日本企業の調査では、中国での製造コストは日本を100とすると80だが、ベトナムは74、カンボジア65、ミャンマーは60となっており、中国の製造コスト高は否めない。


これについて、RFAは専門家の話として、中国ではこの10年間で、人件費が大幅に上昇するなど、日系企業は中国での投資コスト高で苦しんでおり、このような状況下で年初から中国で新型コロナウイルスが大流行し、日本政府が中国からの移転を促進する政策を打ち出したことで、「渡りに船」とばかりに中国からの移転を決めた日系企業が多くなってきたのではないか、と報じている。

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中国漁船で働くインドネシア人船員への虐待!中国漁船から逃げ出したインドネシア人青年indo

 インドネシアで、中国漁船で働くインドネシア人船員への虐待が問題になっている。中でも人々に衝撃を与えたのは、船上から遺体が無残に海に投げ捨てられる動画だった。



船員の多くは地方出身の貧しい若者だ。劣悪な労働環境にも関わらず、「月給300ドル(約3万円)」が魅力的で従事してしまうのだという。今年4月、中国漁船から逃げるため海に飛び込み、漂流後に救助された元船員の男性が、壮絶な体験談を語ってくれた。


船員への虐待疑惑は5月、韓国のMBCテレビが報じたことで表面化した。この男性が乗り込んだものとは別の漁船が韓国南東部・釜山港へ寄港した際、船員が韓国政府に助けを求めたという。船員は船内で遺体を遺棄する様子が映された動画を渡し、これがソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)で瞬く間に拡散した。



衝撃的な映像にインドネシア国民の間では中国への不信感や怒りが広がり、インドネシア政府に対して真相究明を求める声が高まった。こうした世論に押されるように放送から2日後、インドネシアのルトノ外相は、過去数カ月間で中国漁船で働いていたインドネシア人船員4人が死亡し、うち3人の遺体が海に遺棄されていたことを明らかにした。複数の漁船で同様の事件が相次いだことで、両国の間で外交問題に発展している。


◇主食は期限切れのカップ麺


インタビューに応じてくれた元船員の男性は、東ジャワ州ルマジャン県出身のマシャリ・ファルディアンシャさん(21)。地元で職業訓練学校を卒業後にバイクや自動車の修理工場で働いていたが、生活は苦しかった。



そんな時、これより給料のいい中国漁船の船員の求人があると聞き、フェイスブックで探し出したインドネシアの仲介業者に連絡を取った。すぐに返信があり、中部ジャワ州テガル市にある業者の宿泊所に呼ばれた。仲介業者からは、月給300ドルで3カ月ごとに家族の口座に入金されると説明を受けた。東ジャワ州の最低賃金は月額約130ドルなので、300ドルは魅力的だろう。


間もなく海上での救難訓練など1週間の研修が行われた。研修を終えた後、1カ月ほどは何もすることがなく、ただ、出発を待つだけだった。。マシャリさんは「宿泊所で食べて寝るだけだったので、早く仕事をして稼ぎたかった」という。まさかその後に命の危険が迫る日々が待っていようとは、夢にも思わなかったのだろう。


2019年9月半ば、マシャリさんはインドネシア各地から集められた同じ年ごろの男性20人と一緒にジャカルタから飛行機でシンガポールへ向かった。シンガポールに到着すると、行き先は4、5人ずつで分かれた。マシャリさんはサウジアラビアとオマーンに向かうという中国の漁船に乗り込むよう指示された。外国漁船で働くリスクも、身を守る方法も、何も知らないままだった。



仕事は乗り込んだその日から始まった。1日の睡眠時間は長くても3時間ほど。少しでも時間があれば網の修繕など雑用を言いつけられた。


主食は賞味期限が切れたインスタント麺だった。次第に空腹に耐えきれなくなり、中国人船員の食料を盗み食いしてしのぐようになる。飲み水は海水を蒸留した茶色くにごった水で、最初は飲み込むこともできなかった。


◇同僚の死


乗船してわずか2週間で、仲間の一人は激しく衰弱した。シンガポールで漁船に一緒に乗り込んだタウフィクさん(31)の爪がはがれ、網を引くこともできなくなったのだ。それでも休むことを許されたのはたった2日間だけだった。マシャリさんは、塩分を含んだ飲み水が体調悪化の原因ではないかと疑ったが、他に口に出来るものがなく、飲まないわけにはいかなかった。まともに体が動かなくなったタウフィクさんは19年12月、中国人の船員に暴行された直後に意識を失い、息を引き取った。



中国人たちは、まさか死に至るとは考えていなかったのだろう。中国人船長を含めた乗組員皆がパニックに陥った。マシャリさんも恐怖に襲われたが、努めて平気なふりを装った。「騒ぎ立てたら次は自分が同じ目に遭わされると思って怖かったから必死だった。生きて帰ることだけを考えた」ためだった。


タウフィクさんの遺体は別の船に移してシンガポール経由で故郷に帰すことになり、マシャリさんらがビニールシートに包んで冷凍庫に入れた。ところが、船がオマーンに近づくと、船長は遺体を海に遺棄するようマシャリさんたちに迫った。理由も説明もなかった。マシャリさんらは拒否したが聞き入れられなかった。せめて遺族に知らせるためにと、スマートフォンでビニールシートに包まれたタウフィクさんの写真を撮ろうとしたが、これも許されなかった。


◇マラッカ海峡へダイブ



タウフィクさんの死後、途中で新たな船員が加えられ、何事もなかったかのように航海は続いた。故郷から遠く離れた海上では助けを求めることもできず、マシャリさんはただひたすら働いた。そんな時、マシャリさんの漁船がインドネシアに寄港するという話を耳にした。「船がアチェに立ち寄ると聞いた時は本当にうれしかった。帰れるかもしれないと思ったから」。マシャリさんはほっと胸をなで下ろした。


ところが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、アチェへの寄航は取りやめになり、漁船は中国に向かうことになったというのである。マシャリさんは、船長に最寄りの島で下船させてほしいと訴えたが笑い飛ばされた。もう海に飛び込んで逃げよう。そう考えて飛び込もうとしたが中国人船員に見つかり、引き戻された後に暴行された。体中が傷だらけになった。


ならば、中国人船員に見つからないように、暗くなってから海に飛び込むしかない。マシャリさんは覚悟を決めた。「最初は新型コロナ(が世界的に大流行している)なんて信じていなかった。でも本当だと分かった時は心底がっかりして、下船できないなら飛び込もうと決めたんです」


4月12日未明のことだった。ほかのインドネシア人船員3人と一緒にマラッカ海峡の真っ暗な海に飛び込んだ。魚を保管するための発泡スチロールにつかまって半日ほど漂流し、近くを通りかかったフィリピン漁船に救助された。それまでの間、茶色く濁った飲み水で空腹をしのいだ。「助かる可能性はゼロに近いと思ったが、あの漁船で殺されるよりは海で死んだほうがましだと思った」とマシャリさんは振り返る。



救助後にマレーシア当局に引き渡され、治療と事情聴取を受けて、ようやく帰国した。船にとどまることにした他のインドネシア人船員の2人とはその後、連絡が途絶えたままだ。


◇出稼ぎに頼らざるを得ない経済事情


帰国後、家族の口座を確認してみると、入金されていたのはたった150ドルだった。7カ月近く働いたのだから、本来は2000ドルほどの支払いがなければならない。インドネシア政府も交渉に加わったが、マシャリさんが最終的に得られたのは1000ドルに過ぎなかった。


それでもマシャリさんは「中国漁船はもう懲りたが、また出稼ぎには行きたい」という。地元でバイク修理をして得られる金額では家族を支えられないためだ。「いつか給料も環境もいいと聞いた日本の工場で働きたいと思っている。そのためには日本語を勉強する費用もためないといけないから。神様が生きるチャンスをくれたし、一度しかない人生だから次こそうまくやらないと」と前向きだ。命からがら逃げ出したばかりだというのに、もう次の勤め先を考えているという。


インドネシアは2045年の先進国入りを目指して経済発展にまい進する。ただ、首都ジャカルタと地方の経済格差は拡大する一方だ。


さらに、新型コロナの影響で国内の経済状況は悪化し、失業率や貧困率は上昇している。地方では今後、中国漁船など海外での出稼ぎを希望する労働者が増えると予想される。


インドネシアの人権団体は、船員の安全が確保されるまで外国漁船での就労を一時的に禁止すべきだと訴える。インドネシア船員の権利保護監視団体「Destructive Fishing Watch(DFW)」のモハマド・アブディ・スフファン氏は「政府間の交渉を見ているかぎり、暴力的な慣習や搾取が終わるとは思えない。インドネシア政府は仲介業者の選定を強化し、出稼ぎ労働者にも強制労働や人身売買の被害に遭うリスクを啓発する必要がある」と訴える。

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